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あしあと

    主な任意接種の対象となる病気とワクチンの概要

    • 初版公開日:[2022年08月24日]
    • 更新日:[2022年8月24日]
    • ID:6927

    予防接種法の対象となっていないいわゆる任意接種は、被接種者(保護者)と医師との相談によって判断し行われる仕組みになっており、行政が行政からの費用負担をもって推奨しているものではありませんが、使用するワクチンは厚生労働省によって医薬品、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(独立行政法人医薬品医療機器総合機構法)上の認可がなされています。

    任意接種には、季節性インフルザ(65歳以上は定期接種)、おたふくかぜ、A型肝炎、黄熱、狂犬病、破傷風、髄膜炎菌感染症、帯状疱疹を予防するワクチン、定期接種外の年齢や時期に行った定期接種ワクチンなどがあります。

    なお、任意接種で万が一健康被害を受けた場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となる場合があります。ただし、予防接種法(定期接種)と比べて救済の対象や給付額等が異なります。

    多くの方が接種を受けている予防接種についてご説明します。

    季節性インフルエンザワクチンについて

    高齢者に対する季節性インフルエンザの予防接種は、予防接種法施行令により定期接種とされておりますが、小児に対する季節性インフルエンザの予防接種は、任意接種となります。

    (1)季節性インフルエンザとは

    季節性インフルエンザは急性呼吸器感染症で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などの全身症状が突然あらわれます。
    潜伏期は24~72時間です。
    呼吸器症状は遅れて出現することが多く、鼻閉、咽頭痛、せきなどです。
    合併症がなければ、2~7日で治癒します。
    合併症、特に肺炎や脳症を併発した場合は重篤となります。

    (2)季節性インフルエンザワクチンの概要

    季節性インフルエンザワクチンに含まれるウイルス株は季節性インフルエンザの流行状況やウイルスの状況を参考にして毎年決定されています。
    乳幼児のインフルエンザワクチンの有効性に関しては、報告によって多少幅がありますが、概ね20~60%の発病効果があったと報告されています。また、乳幼児の重症化予防に関する有効性を示唆する報告も散見されます。
    季節性インフルエンザワクチンの製造過程で発育鶏卵が使用されますが、鶏卵成分は生成段階で除去されています。
    しかし、卵アレルギーが明確な者に対しての接種には注意が必要です。鶏卵、鶏肉にアナフィラキシーがあった者で、接種を希望される場合にはかかりつけ医にご相談ください。

    おたふくかぜワクチン

    (1)おたふくかぜとは

    おたふくかぜはムンプスウイルスの飛沫感染後、増殖したウイルスは全身に広がり、各臓器に病変を起こします。
    潜伏期は2~3週間です。
    周りの人に感染させる可能性のある期間は、発病数日前から耳下腺、顎下腺または舌下腺の腫脹が始まった後5日を経過するまでと考えられています。
    主要症状は耳下腺の腫脹で、境界不鮮明で均一なやわらかい痛みを伴った腫脹を示します。顎下腺、舌下腺が腫脹することもあり、発熱を伴うこともあります。
    年長児や成人が罹患すると、症状が著名で、合併症の頻度が高くなります。合併症で最も多いのは無菌性髄膜炎で、診断される頻度は1~10%です。
    頻度は少ないですが、他に脳炎、膵炎などがあります。思春期以降の男性では精巣炎、女性では卵巣炎を合併することもあります。特に難治性である難聴合併への注意が必要です。

    (2)おたふくかぜワクチンの概要

    ムンプスウイルスを弱毒化した生ワクチンです。ワクチン接種後の抗体陽転率は90%以上と高く、国内での流行時調査では、ワクチンの効果は80%程度と考えられています。ワクチンを受けていたにもかかわらず発症した人のほとんどは、軽くすんでいます。

    現在市販されているおたふくかぜワクチンの副反応として、耳下腺の軽度腫脹が1%位にみられます。
    無菌性髄膜炎の副反応報告頻度は、接種1,600~2,300人に1例程度(ワクチン添付文書)と記載されていますが、最近の報告では接種年齢によって頻度に違いはあるものの、さらに低い頻度であることが報告されています。
    自然感染での無菌性髄膜炎の合併が1~10%あることや難聴のおそれもあること、罹患すると保育所や学校を長期間休まなければならないこと、発病は3~6歳が多いことを考慮すると、接種は、MRワクチン第1期、水痘ワクチン1回目、Hibワクチン追加、小児用肺炎球菌ワクチン追加等と同時期に、あるいは終了したらできるだけ早期に、少なくとも好発年齢である3歳より前に接種することが勧められます。
    また、日本小児科学会は予防効果を確実にするため、MRワクチン第2期と同時期に2回目の接種を推奨しています。

    帯状疱疹ワクチン

    (1)帯状疱疹とは

    水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘が治癒した後も、神経節に生涯にわたり潜伏感染しますが、加齢、免疫抑制その他の原因により水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が何らかの原因で低下した場合にウイルスが再活性化し、その結果、潜伏感染をしていた神経支配領域の皮膚に帯状疱疹を発症することがあります。
    発症すると、体の片側に水疱を伴う紅斑が帯状に広がります。
    症状は、痛みを伴うことが多く、3~4週間ほど続きます。

    治療の基本は、抗ヘルペスウイルス薬の使用ですが、皮膚症状が治った後も、帯状疱疹後神経痛と呼ばれる長期間にわたる痛みが続くことがあります。
    帯状疱疹後神経痛には根本的な治療方法がなく、何か月、ときには何年も強い痛みが残ってしまうことがあります。痛みがひどい場合には、神経の周りに局所麻酔薬を直接注射する「神経ブロック」が選択されることもあります。
    50歳以上では、帯状疱疹を発症した人の約2割が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれています。発症部位によっては、角膜炎等による視力低下や失明、Ramsay-Hunt症候群(耳介部の水疱形成、顔面神経麻痺、難聴、めまい)といった合併症があります。

    宮崎県で実施された帯状疱疹患者48,388人の疫学研究によると、帯状疱疹の発症は50歳以上に多く、約7割を占めています。これは加齢による免疫力の低下が原因と考えられます。毎年約60万人が発症し、80歳までに約3人に1人が経験すると推定されています。

    (2)帯状疱疹ワクチンの概要

    (1)水痘ワクチン(帯状疱疹予防としての水痘ワクチン)

    水痘ワクチンは2016年3月に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の効能・効果」が追加され、50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防(任意接種)を目的に接種することができます。

    帯状疱疹予防のための高齢者での検討においては、水痘ワクチンを高齢者に接種した場合、50~60歳代で約90%、70歳代で約85%に水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫が上昇したとの報告があります。

    米国の帯状疱疹ワクチンの臨床試験においては、50~60歳で69.8%の発症予防効果が認められました。60歳以上における発症率は、ワクチン接種群では年間1,000人当たり5.42人と、非接種群の11.12人と比べて低く、帯状疱疹後神経痛発症率もワクチン接種群では年間1,000人当たり0.46人と、非接種群の1.38人と比べて有意に低かったとされています。また、接種から5年間、帯状疱疹発症予防効果の持続が確認されたとの報告があります。

    水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫能が低下した高齢者を含めて、50歳以上を対象に1回接種します。

    (2)乾燥組換え帯状疱疹ワクチン

    50歳以上と70歳以上の被験者(日本人を含む)を対象として行った国際共同第Ⅲ相臨床試験の結果、帯状疱疹に対する有効性は50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%と、いずれの年齢層においても優れた予防効果を示しました。わが国においても、50歳以上の帯状疱疹の予防として2020年1月から販売されています。

    50歳以上の成人に2か月間隔で2回接種します。標準的な接種間隔は、1回目の接種から2か月後に2回目の接種を行いますが、1回目の接種から2か月を超えた場合であっても、6か月後までに2回目の接種を完了します。

    実施している医療機関につきましては、帯状疱疹ワクチンを扱う製薬会社のホームページにて医療機関を検索することができます。

    取り扱い製薬会社のホームページ